医療法人啓林堂クリニック 泌尿器科皮膚科 福岡県福岡市早良区原8-2-26 電話092-873-7877

尿失禁の分類と治療法

啓林堂クリニック泌尿器科皮膚科 福岡市早良区

はじめに

try.jpg腎臓で作られた尿が膀胱へ少しずつ流入すると、膀胱は膨らんでいきますので、膀胱内は低圧の状態が維持されます。尿の出口である尿道は周囲の筋肉が締め上げていますので、膀胱より高い圧が維持されます。これが正常の蓄尿期です。
 一方、排尿期は、膀胱を取り巻く筋肉が収縮し、膀胱内の圧力を上げます。同時に、それまで尿道を締めていた筋肉が緩んだ結果、排尿となります。(尿の勢いが弱いときは、膀胱の収縮が弱いか、尿道の開きが悪い)
 尿失禁の大部分は、蓄尿機能に、何らかの異常が起こったときに起こってきます。例えば、膀胱の膨らみが悪い場合は、尿が溜まってくると次第に膀胱内圧が上昇し、低圧を維持できません。尿道の圧より高くなれば、当然失禁となります。低圧で維持していても、急に膀胱の筋肉が収縮し、尿道圧より高くなれば、突然の尿失禁となります。一方、膀胱の低圧維持は正常でも、尿道を締め付ける圧力が低下すれば、失禁が起きます。
 このように、尿失禁は様々な原因によって発症します。さらに、尿のたまりを感じる神経や、尿意の異常が、上述の物理的メカニズムに大きく影響しますので、より複雑になります。
 一般的に、尿失禁の分類は、下記の、症候による分類をよく用いますが、病態やメカニズムによる分類(多岐にわたる)も、治療の上では重要となります。

尿失禁の分類(症候による)

腹圧性尿失禁

  • 咳やくしゃみ、大笑い、重いものを持つなど、腹圧上昇にて起こる尿失禁

切迫性尿失禁

  • 突然の激しい尿意(尿意切迫感)の直後、あるいは同時に起こる尿失禁

混合性尿失禁

  • 腹圧性と切迫性の両方が混在するタイプ

持続性尿失禁

  • 尿道をしめる筋肉に障害があるときなどに起こる

その他

機能性尿失禁

  • 尿路の働きに問題はないが、高齢や四肢の麻痺などで、トイレへの移動や排尿までに時間がかかり間に合わない

溢流性尿失禁

  • 排尿できずに膀胱に溜まりすぎて溢れてしまう

尿失禁の治療法

膀胱訓練

 頻尿、尿意切迫がある方におこないます。トイレを我慢する訓練です。最初は5分程度から開始します。効果には個人差があり、専門医による指導が必要です。

骨盤底筋体操(訓練)

 腹圧性尿失禁に用いられます。軽症であれば骨盤底筋体操と内服薬の併用で、かなりの効果がみられます。最近では、ネット上でも骨盤底筋体操の情報が掲載されていたり、各種骨盤底筋体操のパンフレットも作成されるようになってきました。しかし、見よう見まねではほとんど成果は期待できないといわれています。体操にはこつと継続が必要で、専門医による指導と効果判定が不可欠です。

電気刺激、磁気刺激療法

 腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁に有効な治療法です。2004年保険適応になりました。当院においても、干渉低周波治療器による治療をおこなっています。メリットは、恥ずかしくない(下腹部にパッドを当てる)ことや痛くないことがあげられます。最初2週間は週2回、その後は週1回程度の通院が必要です。

薬物療法

 抗コリン薬

  • 切迫性尿失禁、膀胱が過敏な場合、膀胱の拡がりが悪い場合などに用いられます。尿失禁治療の主力となる薬剤ですが、口渇や便秘を招くことがあります。

 三環系抗うつ薬

  • 尿路に関しては、膀胱を安静にする作用があり、遺尿症に保険適応がある薬剤です。。

 ベータ刺激剤

  • 尿道圧の上昇を期待して、腹圧性尿失禁に用いることがあります。

間歇導尿

 膀胱の収縮が悪い場合など、残尿が多い場合に他の治療と組み合わせる場合があります。

膀胱内注入療法

ボツリヌス毒素注入療法

  • 強力な筋の弛緩作用があり、膀胱の異常収縮を抑えます。内視鏡を用い、直接膀胱粘膜に注入します。

レジニフェラトキシン注入療法

  • カプサイシン(唐辛子の辛み)の数千倍強力な物質を膀胱内へ注入します。特定の神経繊維のみを変性させるといわれ、拡がりが悪い膀胱や異常反射が高度な場合に行われることがあります。

手術

膀胱頸部(尿道)スリング手術:

  • 尿道を支えることを目的とした手術で、腹圧性尿失禁の手術として普及してきました。局所麻酔にておこないます(数日の入院が必要)。開腹手術に比べ手術侵襲が少なく、尿道つり上げ術に比べ成績も安定してるメリットがあります。術後に尿が出にくくなったり、創感染の可能性もないわけではありませんので、十分説明を受けられることをお勧めいたします。

コラーゲン注入療法

  • 尿道周囲にコラーゲンを注入し、尿道を補強します。なにより外来手術が可能。スリング手術より低侵襲ですが、再発の可能性も考慮する必要があります。

開腹手術

  • 膀胱頸部を挙上するBurch手術は、ヨーロッパで標準手術として広く行われており、尿道が動くタイプの腹圧性尿失禁に安定した成績があります。

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