医療法人啓林堂クリニック 泌尿器科皮膚科 福岡県福岡市早良区原8-2-26 電話092-873-7877

”おねしょ、夜尿症”  検査、治療と対策

啓林堂クリニック泌尿器科皮膚科 福岡市早良区

はじめに

 おねしょは2歳児の50%、4歳児の25%にみられる普通の現象で病気とは考えませんが、学童期(6歳以降)まで続くと心理的や社会的に問題がおこることがあります。自然教室、林間学校、その他お泊まりごとが近づくと、親と本人に大きなプレッシャーがかかります。また、おねしょが毎日であれば、後始末も大変ですので生活上支障が出てきます。このような状況を改善する目的で生活指導や治療を行う場合に夜尿症という言葉を使用します。
 ちなみに福岡をはじめ九州広域の方言では”しかぶる”と言います。illust290.png
 夜間睡眠中の尿漏れのみを夜尿症 (Monosymptomatic nocturnal enuresis)、昼間の尿漏れを尿失禁症 (Urinary incontinence)、昼夜とも尿漏れのあるものを遺尿症 (enuresis) と言います。

夜尿症のタイプは、以下のように分類されます。
(1)夜間腎臓で作られる尿が増えてしまう ”多尿型”
(2)尿を受ける膀胱の蓄尿機能が十分ではない、つまり膀胱が小さい ”膀胱型”
(3)多尿型と膀胱型、両方の特徴を有する ”混合型”
(4)上記に当てはまらない ”かい離型”
  最近の知見では多尿型、膀胱型ともに睡眠の性質が関与している可能性が指摘されています。かい離型は難治性の傾向があります。

 夜尿症のみの場合、通常6歳以降が治療の対象となります。5歳以下でも昼間にも尿漏れがある(遺尿症)場合には、泌尿器疾患、脊髄神経疾患、内分泌疾患などが隠れていることがありますので、治療や検査が必要になる場合もあります。
 なお、大人の夜尿症もあります。小児期より継続している場合と成人してから発症する場合があります。

検査

 夜尿症の検査は、夜尿症の状況や重症度を正確に把握すること、夜尿症のタイプを確認すること、基礎疾患の有無を明らかにすることを念頭に置いて行います。

[問診]

幼児期のおねしょの状態、尿崩症の家族歴、身長体重、多飲傾向の有無などをお聞きします。昼間に頻尿や尿失禁がある場合は腎尿路疾患のチェックが必要です。

[検尿]

尿路感染の有無、尿比重(早朝尿)、尿浸透圧、タンパク尿、潜血尿などの確認をします。

[夜間尿量の測定]

あらかじめ重さを量ったおむつを着用してもらい、夜尿の度におむつの重さを測定します。濡れたおむつの重さから最初の重さを差し引いて夜尿の量とします。夜間の自排尿量と起床時の自排尿量を加えれば夜間尿量となります。夜尿の度に起きて頂く必要がありますので、ご家族の方の協力が不可欠です。ビーカー.png
 当院では超音波による持続尿量モニター機器を導入。下腹部にセンサーを貼って眠るだけですので、ご家族の負担が軽減します。夜間の膀胱尿の状態を詳細に記録できますので、夜間多尿の有無、蓄尿機能の評価に有用です。

[血液検査]

腎機能のチェック、多尿型が疑われる場合はホルモンの測定を行います。

[膀胱容量の測定]

我慢したときの排尿量を測定します。下記の尿流検査法で測定すれば、より詳細な状態を把握できます。

[尿流検査]

当院には尿流を測定する専用トイレがあります。便器にセンサーが付いており、排尿すると排尿パターンが詳細に記録されます。最大尿流率など各種指標の測定を行います。排尿機能、特に排出機能を評価します。

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[残尿測定]

超音波で測定します。簡易に測定する機器もありますが、小児の残尿量では誤差が大きくなる恐れがありますので、必ずモニターに描出させて実測をする必要があります。

[レントゲン検査]

脊髄疾患や尿路疾患の異常をチェックします。

[腹部超音波検査]

尿路疾患の異常をチェックします。

治療

生活指導


 上記しましたように、治療に先立ち多尿型か膀胱型かをよく見極める必要があります。膀胱の蓄尿機能が弱い場合、飲水制限を行っても苦しいだけで効果は期待できません。飲水制限によって尿量が減少すれば見かけ上夜尿症の程度は減少します。しかし、蓄尿機能を改善させるわけではないので根本的解決には至りません。安易な水分制限は慎むべきです。
 排尿記録、尿量モニター、その他の検査結果の検討を行った上で、必要な場合に限り夕食後から就寝時にかけて水分制限をすることがあります。また、わざとトイレを我慢させて膀胱容量を拡大する訓練をすることがあります。治療効果の確認や自覚を促す意味で”おねしょカレンダー”をつけていただくことがあります。
 生活指導や治療を始めると、その結果に一喜一憂されたり、期待のあまり焦りにつながることもあります。子供も周囲の雰囲気を感じ取り、悲しい気持ちになります。本人には、夜尿症に対する負担やストレスを感じさせないよう配慮することも大切です。
 焦らず、根気よくおこないましょう。

夜尿アラーム治療


enuresis-alerm.jpg当院で使用しているアラーム水分を感知するセンサーを下着やおむつに取り付け、夜尿症があった場合にアラームが鳴る機器があります。尿意覚醒を促したり、膀胱容量の拡大が期待できる治療です。
 この治療は、夜尿のたびにやみくもにアラームを鳴らせばよいというものではなく、また夜尿頻度の減少だけで改善ありとするものでもありません。夜尿の頻度が変わらなくても、改善に向かっている場合もあります。治療期間中は、夜尿発生の時間、漏れた量、その時の膀胱内残存尿量、夜間尿量等を継続測定します。その各種数値の経過や変化を見ながら、効果判定や治療期間の検討をおこなっていきます。適正使用が非常に重要ですので、必ず医師の指導のもとおこなって下さい。
 夜尿症の方は眠りが深い場合が多いので、アラームで本人が目覚めない場合は家族の協力が必要になります。また、同じアラーム音では慣れてきてそのうちに起きなくなる場合もありますので、アラーム音色が変化したり振動を加える機器もあります。1〜3ヶ月間行いますが、継続できない場合もあります。

当院では治療費軽減のため
アラーム機器のレンタルも行っています

薬物治療

抗コリン剤

  • 膀胱の刺激をとる薬剤です。成人において過活動膀胱、頻尿、尿失禁によく用いられます。おねしょアラームとの併用、他剤との併用、あるいは日中の過活動膀胱を伴っている場合に使用する場合があります。

三環系抗うつ剤

  • 古くから使用される薬剤です。尿意覚醒を促したり膀胱の収縮を抑制するなどの働きが夜尿症に有効と考えられています。副作用に注意を払う必要が有るため、最近では使用頻度は減少しています。

抗利尿ホルモン

  • 夜間尿量が多く、尿の濃縮力が弱い場合に用いられます。鼻腔スプレー剤の他内服剤もあります。尿量を抑制する(ということは体に水分がたまる)ため、夕方から夜間にかけての飲水量や夜間尿量、尿浸透圧などに注意しながら使用します。

その他

  • 尿道内圧(膀胱の出口の圧力)を上昇させて尿漏れを防ぐβ刺激剤や漢方薬などを用いることがあります。

干渉低周波治療


スクリーンショット 2013-01-16 0.13.57.png通常の低周波とは異なり、”干渉低周波”は体の深部の筋肉に到達します。頻尿や尿意切迫、尿失禁に効果がある方法です。下腹部に低周波用シール(パッド)を貼り15分程度干渉低周波で刺激します。痛みや重篤な副作用はほとんどないため比較的安全、気軽に行えます。恥ずかしくもありません。治療開始2週間は週2回の通院、その後は週1回程度の通院が必要です。

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